コンパクトシティとは?注目されている理由と導入のメリット・デメリット

コンパクトシティとは?注目されている理由と導入のメリット・デメリット

土地の地価は人口集中によって高くなりますが、人口集中によって地価が高くなることで人は経済的な面を考慮し、中心地ではなく郊外へ目を向けるようになります。土地開発が進むことで交通設備が整い、商業施設が出店するようになると新しい街が誕生しますが、地価の安さを理由にその新たな街に住む人が増えました。

 

その結果、中心地は活気を失うようになります。この現象をドーナツ化現象と呼び、バブル期にもベッドタウンの影響で同様の現象が起きたと言います。コンパクトシティというのはドーナツ化現象に陥ってしまった中心地に活気を取り戻すために導入される構想で、空洞化した中心地に注目されています。

 

では、注目されているコンパクトシティとはどのようなものなのか?メリットとデメリット、代表的な例を踏まえてお伝えしていきます。

コンパクトシティとはどんな都市?

コンパクトシティの名前から察しはつくかと思いますが、簡単に言えば「コンパクトなシティ(小さくまとまった都市)」のことを言います。

 

小さくまとまると聞くと人口が少ないこじんまりとした都市のイメージが浮かぶかもしれませんが、そういう意味ではなくて、「生活する上で必要な機能を一定の範囲に集めた都市」のことを呈しています。

 

生活上必要となる機能とは、行政サービスや商業地のことです。国や自治体に関する手続きを行う場所であったり、生活用品を購入する場所は生活をするにあたって欠かせない場所ですよね。そのような施設を一定範囲にコンパクトにまとめた都市が、コンパクトシティなのです。

 

形態にはいくつかの種類が存在し、その地域に適した形態が考案されますが、基本的には公共交通や徒歩を利用した際の形態プランとなっています。自転車を使用する郊外の生活スタイルからは、離脱されています。そして、居住区域と都市区域を定めて生活圏をコントロールする目的を持ちます。

 

要するに、中心地ではなく郊外に住む場所を求める人が増えた結果として無秩序に広がってしまった生活圏を中心地に集約させることで「無駄を出来る限り減らした行政と生活を目指す」のです。ここで言う中心地には、公共交通で中心地と結ばれている沿線も含みます。

 

コンパクトシティは生活上必要な機能及び施設を一定範囲に集め、無駄を削減した行政と生活のために導入されますが、注目されている理由や導入される理由は何なのでしょうか?気になりますよね。理由として大きいのは中心地の人口減少という時代背景ですが、実は他にも要因となっている可能性のある内容があります。

 

「人口減少」

ドーナツ化現象が起きる前は、高度成長と人口増加の関係で郊外に向けた土地開発が進みました。しかし、現代に至っては増加どころか減少問題が起きているため、拡大するのではなく縮小しなければならない判断がされています。都市構造を再構築し、人口減少による良くない影響(空家増加・耕作放棄地・限界集落など)を改善する考えが広がっているのです。

 

「少牛高齢化」

高齢の方は公共機関が密集していて交通の便が良い中心地を好みますが、自動車の運転が出来て郊外でも問題なく生活することが可能な若い世代は郊外へ移住していきます。そのことから中心地は少子高齢化になりやすい傾向があり、地域活性化のことを考えると問題となるのです。

 

「経済的な合理性」

人が多い土地では自然と労働力を確保しやすくなり、産業が発達しやすくなります。人口減少によって中心地では確保できる労働力が少なくなっているのです。また、郊外住む人が増えると行政管理範囲が広がるため、水道や道路の管理コストが増えます。

 

「環境問題」

自動車はCO2を排出することから、公共機関が充実している中心地に集約して、メインの移動手段を公共機関にして自動車利用を減らす=CO2排出量を減らすことを実現する取り組みもコンパクトシティには含まれています。

コンパクトシティのメリットとは?

 

中心地の人口減少による産業の衰退などを改善するためになる構想としてコンパクトシティが注目されているわけですが、実際に導入することで得られるメリットは産業や環境のことだけに限りません。

 

中心地で生活をする人や中心地を生活の中で利用する人たちにとっても、メリットとなることはあります

 

利便性の向上

生活上で必要となる機能が集まっているコンパクトシティでは、生活用品を購入したり制度のことで手続きをしたりなどの際に利便性が良くなります。公共機関も集まっているので用のある施設にアクセスしやすく、自動車を保有しなくても移動しやすいことから自動車保有にかかる費用の削減にもつながります

 

住民サービスが充実する

地域の行政が効率的になると、行政機関の運営が良い方向に向きます。すると、住民に対して行った方が良いと考えられる住民サービスに投資できる分が増えます。行政の運営にかかる費用を削減することが出来れば、住民のためのサービスにお金をかけることができるようになるということです。

 

生活をする中で、行政による住民サービスが充実してくれていると助かることがありますよね。行政の運営資金は住民の生活を維持するために用いられており、自動車で走りやすい道路も水を運んでくれる水道管も行政の資金で成り立っています。生活をする人たちが中心地に集約してくれると、行政は管理範囲が広くならずに済むので、その分出費の削減にもつながります。

 

コミュニティ形成

コンパクトシティは生活する上で不便のない環境となっているので、長年に渡り中心地に住んでいる高齢の方と生産年齢に値する世代の人が同じ土地で生活しやすいとされています。幅広い世代が同じ土地で生活をすることで、昔にあった助け合いのコミュニティが生まれるのではないかという期待が生じます。

 

時間の余裕が出来る

郊外から中心地に勤務している人は、割と多いことでしょう。しかし、郊外から中心地に勤務する時には長い時間をかけて電車で通勤をしたり、自動車を利用するにしても渋滞に巻き込まれるので通勤時間にロスが生じます。このロス時間は生産のためにならない無駄な時間である上に、労働以外の時間が少なくなりますよね。

 

労働及び生産は、働く人のための時間があってこそ上手くいくという見方がされています。コンパクトシティに人口が集約されたからといって通勤ラッシュを避けられるといったメリットはありませんが、通勤にかかる時間を減らすメリットはあります。通勤前には準備の時間があり、そこから長時間かけて通勤するとなると、生産としては無駄が多いと思いませんか?

 

ラッシュはあるとしても勤務地が近いことで通勤に要する時間が少なくなり、結果的には生産活動の向上につながると言われています。

 

コンパクトシティのデメリットとは?

交通や生活の面で便利になるなどのメリットがあるコンパクトシティですが、メリットだけに注目する地域は珍しいでしょう。何でもそうですが、メリットがあるならデメリットもあることが想像されます。コンパクトシティも例外ではなく、勿論デメリットも存在しています。

 

では、コンパクトシティのデメリットとはどのようなことなのか?導入前の参考になると思うので、確認しておきましょう。

 

居住地域に制限が生じる

コンパクトシティ導入時には、環境保全地域と居住地域を区分けすることになります。区分けする理由は居住地域に移住することを促進するためですが、この方針は居住地域の制限をしていることと同じです。人には人の生活スタイルや好む環境があるので、地域のためにはコンパクトシティが良いかもしれないけど、住む場所は自分が好む場所が良い方にとってはデメリットかもしれません。

 

居住環境が悪化する可能性

中心地に人を集約するということは、人口の増加が起きるということですよね。一つの土地に人が増えることで、人による人への弊害が起きる可能性が高くなることが指摘されています。近隣トラブル・治安の悪化・高層の建物によって起きる日照問題などが起きることが予測されるので、住居の密集を好まない方や静かに生活したい方にとっては不満や不安が増える可能性が考えらます。

 

医療や福祉の不足に対する逆行

人が増えれば、医療にかかる資源も増やさなければなりません。福祉に関しても医療と同じです。中心地は地価が高いことから、医療や福祉の施設を誘導することができるのかが問題となります。ただでさえ東京圏・中京圏の3大都市では医療の資源不足が問題となっているので、人口増加による資源調達が追い付くのか?ということに対して焦点におかれています。

 

この改善策は、今ある施設を活用することです。現存施設を無駄にせず、活用しながら医療や福祉の機能を展開していくことがコンパクトシティ導入時に求められます。

 

資産価値に格差が生じる

不動産所有者に生じるデメリットの話で、土地の価値は人口が多いほど高くなりますよね。それは、住んでいる人が多い=利用できるので不動産としての価値が高いとなるからです。コンパクトシティでは居住地域が定められるので、持っている不動産の土地が指定の居住地域から外れてしまった場合、不動産価値が下がります。

 

居住地域の土地の方が不動産価値が上がり、非居住地域の土地は不動産価値が下がることになるので、不動産価値に格差が生じる可能性があるのです。また、そもそも郊外へ移住した理由が地価であった場合は中心地の不動産を購入できる資金がないことが考えられます。

 

加えて、コンパクトシティを中心地が導入すると郊外の不動産価値が下がるので、経済的な理由で郊外を選んだ方にとっては経済的デメリットが多いです。

コンパクトシティの代表的な都市

コンパクトシティを既に導入している都市はどのようになっているのか、なぜ導入することに決めたのかなどを踏まえて紹介していきますが、現時点でのコンパクトシティの導入は先進的取組になるため研究対象として各自治体が視察したりなどが行われているそうです。

 

今回紹介する代表的なコンパクトシティは青森市と富山市で、それぞれの導入理由と導入結果を見てきましょう。

 

青森市

青森市がコンパクトシティに注目した理由は、青森県を中心とした市街化区域にドーナツ化現象が徐々に起きてきたからです。市街化区域のドーナツ化現象によって、青森市の人口は減少し、少子高齢化が進みました。その結果、青森市の中心地は絵を描いたように空洞化し、見事なドーナツ型になってしまったと言います。

 

自体の深刻さを受け止めた青森市は、コンパクトシティに注目しました。コンパクトシティを導入することで、青森市が達成すべき目標は「郊外拡大によって増大した除雪費用の軽減を含めた財政改善」と「新幹線停車駅である新青森駅の交通強化」です。

 

新青森駅は青森駅から4キロメートル離れているため、交通の強化を行わないと新青森駅は新幹線停車駅として栄えることができませんし、利便性も発揮されません。コンパクトシティは基本的な機能として公共機関の設備が必要となるので、その一環で青森駅から新青森駅までのアクセス強化を行う構想が目標として掲げられます。

 

青森市のコンパクトシティでは、青森駅を中心として

  • 「ミッド」
  • 「インナー」
  • 「アウター」

の区域を定めました。

 

「インナー」は既存市街地区域で、活性化を目標とする地域となります。「ミッド」は住宅エリア、「アウター」は自然環境保護を重点におかれた地域です。

 

そして、官民合同で複合商業施設を建設します。テナントと図書館などの公共施設が同じ場所にあるので足を運ぶ人は増えましたが、複合商業施設の建設には多額の資金がかかりました。が、現実として複合商業施設の経営資産をまともに行えている行政は全国のどこにもありません。

 

賃料が不足して経営が悪化すると危機に陥った運営会社を青森市が債務を買い取ったことがあり、この後市民の反発などを理由にコンパクトシティを進めた市長が辞任したそうです。コンパクトシティと複合商業施設に関しては、今でも青森県が抱える課題となっています。

 

富山市

富山市では郊外に向かう人口拡散が深刻で、自動車依存率が非常に高く8割以上の住民が自動車を保有しているとされます。道路の設備に費用がかかる上に公共施設が衰退し、市街地の密度も低下したのでコンパクトシティに注目して導入を行ったようです。

 

富山市のコンパクトシティは団子型で、徒歩で利用可能な生活圏(団子)を公共交通機関(串)で繋ぐ構想で構成が進められます。公共交通機関は日常的な交通手段で使えるくらいのレベルにするため、廃線を用いて利便性を上げます。結果的に利用者が増えてCO2削減にもなり、導入により成果を上げたとみなされています。

 

まとめ

コンパクトシティは研究段階にある都市構造であるため、現時点で導入することが現実的な取り組みなのかという点では疑問視されています。今回お伝えしたメリットはあくまで理論上の話であり、デメリットのことも考えると導入することで生活しやすくなるのかは不確かです。

 

コンパクトシティを導入することで実現される有効性、必要となる費用、住民の生活レベルなど、注目したとしても導入前に考えなければならないことはたくさんあります。その地域に適した構想を考えて構築していくことが大事であり、実際に構造として完成した時にどのようなことが起きるのかは分かりません。

 

メリットも生じることでしょうし、もちろん改善すべき課題も生じることでしょう。

 

そうなった時に、課題をどのように解決していくのかで失敗すると行政の運営状況は悪化の道を辿ることが予測されます。

 

コンパクトシティを導入するにあたり建設しなければならない施設は必ずありますが、既存の施設や機能を再利用したり活用することで費用を削減しながら構築できるかもしれません。活用できるものと新しく作り上げる必要があるものを明確にし、どのくらいの費用がかかるのかを出すことで費用削減につながります。

 

コンパクトシティは中心地に活気を取り戻す構想ですが、中心地を避けて郊外へ移住した方にとってはデメリットが多い構想となるのです。中心地を避けた理由が経済的な地価の問題であった場合、中心地へ移住することが勧められると困りますよね。

 

しかも、コンパクトシティでは中心地に人を集約するために居住地域の地価が上がり不動産価値も上昇、すると郊外の不動産は価値が下落します。また、郊外には農村集落があるため、そのような人たちも中心地に組み込むことは正直言って無理な話です。

 

地域内の住民を中心地に集めることで予測される今後の問題は、人口密度増加による地価上昇と生活環境の悪化です。この問題は地域を問わず予測されることで、問題が生じた時にはかつての人口増加問題と同じことが起きるわけですから、そもそもコンパクトシティという構想はどうなのか?という見方があって当然です。

 

中心地から郊外へ移住する人が増えている現代では、ドーナツ化現象で中心地の活気が損なわれている傾向にあるため、コンパクトシティに注目している地域は少なくないでしょう。コンパクトシティにはコンパクトシティの良さがありますが、デメリットのことも忘れてはならないことであり、現実的に導入することで行政が好転するか悪化するかは行ってみないと分からない段階なので、今後どうなるのかに関しては先が見えません。

 

地域で考えてみた結果として導入してみることを決めたのであれば、適した構想作った上で構築していくことが大事なポイントとなることでしょう。