親の土地・持ち家や実家を売る4つのパターン

親の土地・持ち家や実家を売る4つのパターン

子が親の土地・持ち家を売却するのは親の生前に行う場合と、親の死後に行う場合があります。

 

どの立場で子が不動産売却に関与するかで必要な書類や注意事項が変わってきます。

 

親の生前に行う場合には本人の意思能力が保たれているかが常に問題になります。本人に意思能力があっても、本人に代わって子が代理人として行動する際、不動産を売買するに当たって適法に代理人として行動しているか買主が警戒する場合もあります。

 

本稿では親の土地・家を売却する典型的な4パターンを取り上げて、売買交渉から売買登記完了まで注意すべき事項を中心に解説いたします。

 

①親の相続した家や土地を売る

相続した親名義の家や土地などの不動産を売却する場合、大前提となるのは親名義の登記のままでは最終的に所有権移転登記を申請することが出来ない点です。所有権は親から相続を受けた子、そして買主へと権利は順番に移転することになります。売買契約の当事者は子と買主なので一旦、子に相続登記で登記名義人を変更しておく必要があるわけです。

 

相続登記に必要なのは、亡くなった親の生まれてから死亡するまでの、戸籍類が必要です。具体的に言えば親の実家で出生した日の記載がある除籍、婚姻後編成された原戸籍、そして死亡日が記載されている戸籍(配偶者も死亡していれば除籍)がまず必要です。更に法定相続人の現在の戸籍、登記名義人となる相続人の住民票が必要になります。

 

相続登記をする場合誰を登記名義人にするのかを決定しておくのが普通です。そのための協議を遺産分割協議と言いますが、その中に親の土地・家について誰を登記名義人にするのかを決定することが必要になります。親の土地・家につき遺産分割協議をする場合、相続人間全員で同意を取り付けることが出来れば問題ありませんが、相続人間で争いに発展した場合では何らかの形で合意できる手立てをつける必要があります。

 

例えば登記名義人は特定の相続人単独名義に決定しておき、後日売買代金について改めて相続人全員で分配するよう取り決めることが考えられます。

 

話し合いで登記名義人が決定すれば、戸籍類を添付して登記申請書を法務局に提出すれば相続登記が完了します。この時登録免許税として不動産(親の土地・家)の課税標準金額の0.4%をかけた額の収入印紙を納付する必要があります。不動産(親の土地・家)の課税標準額は固定資産税納付通知書で確認することが出来ます。

 

相続登記が完了すると、漸く買主と売買契約を締結することになります。売買契約では買主への情報開示の一環として一戸建て住宅なら建築確認済証や建築設計図面等も用意します。マンションであれば修繕積立金や管理費を定めた組合規約なども用意します。

 

売買登記申請時には登記識別情報(以前の権利書に相当するもの)と売主の実印と印鑑証明書、買主の住民票が必要になります。これらの書類を添付した登記申請書を法務局に提出すれば売買登記が完了します。親の土地・家を相続して不動産を売却するパターンでは事前に相続人間で合意に達していることが以後の手続きを円滑にすることの大前提となります。

 

代理で売る

親の土地・家を代理で売る場合には

  1. 本人の代理権授与による代理人(任意代理人)の場合
  2. 成年後見人などの法定代理人の場合

の2つのパターンがありますが、ここでは任意代理人の場合を想定して解説します。

 

子が親の代理人として行動するのは親本人が意思能力に問題は無いものの、療養中のため直接売買契約に関与できない状況が考えられます。

 

 

売買契約は売主買主の当事者が契約を結ぶのが原則ですが、代理人の行った行為は本人に帰属すると考えられているので代理人に売買契約を委ねることは可能です。しかし買主としては子であっても本人以外の者が売買契約に直接関与してくるので、警戒感を持つのが普通です。

 

そこで本人から子にあてた委任状を買主に提示することが必須になります。本人の真意に基づく委任であることを証明するため実印を押印し、印鑑証明書も付けるのが普通です。

 

委任状には売買契約締結に際して一切の権限を与える旨の受任事項を明記しておきます。それでも買主としては、子に成りすました第三者との懸念を払拭できない場合には、親本人と売買意思の確認したいと希望することもあります。戸籍謄本などを添付して親子関係を明らかにすることも必要です。

 

親の土地・家を代理人として子が関与するパターンでは、成りすましや私費追従の意図を持って子が適法な代理人を振舞っているのでは無いか、との懸念が常に付いて回ります。このような場合、専門職である第三者のサポートを受けることを検討するのが妥当です。

 

例えば委任を受けた子が、親の土地・家の売却について弁護士に更に委任(復委任)することも可能です。買主がある程度検討が付いているなら、弁護士に契約締結までの全てを委任する方法が考えられます。

 

親の土地・家について売買契約を締結し、いよいよ売買代金を支払って決済の予定が付けば司法書士に依頼します。売買登記では売主買主は利害対立関係に立つので、登記の専門家である司法書士が関与することで円滑に売買登記申請まで完結させることが可能になります。この決済の場では必ず、司法書士が本人確認し、売買意思の確認も行います。

 

この段階で成りすましや無権代理が発覚すれば買主は契約の取消しが可能になるので、不法な取引に基づく所有権移転登記も防止されることになります。親の土地・家の売買を子が代理するパターンでは、本人確認と意思確認をきっちり行うことが重要になります。

 

親という事実が判断できない場合

親の土地・家を代理で売る場合のもう一つのパターンとして、成年後見人などの法定代理人が関与する場合があります。本人以外でも代理人で契約を締結できるのは先ほど述べたとおりですが、そもそも重度の認知症や意識障害などで意思確認出来ない場合はどうでしょうか

 

意思確認できない以上は委任状に手を添えて押印しても、委任状は無効です。代理権を授与できない場合に本人の身代わりとなって、本人に代わって行動する役割を担っているのが成年後見人です。

 

親に意思を表明できない状態でも、成年後見人が付いていれば、親の土地・家を売却することが可能になりますが、誰でも勝手に就任できるわけではありません。家庭裁判所に後見開始の申し立てをする必要があります。

 

後見人については一定の欠格事由がありますが、家庭裁判所への申し立ての際に配偶者や子が成年後見人候補となることも可能です。配偶者が健常であれば候補者になることも良くあります。後見制度が本人の療養看護に責任を負う職責を担っているからで、身近な親族が成年後見人に就任するほうが本人の利益のためにもなると考えられるからです。

 

しかし土地や家などの売買契約の場面においても同列に言えるかは問題があります。親の土地・家を売るに際し、成年後見人に就任するのは自ら売買代金をせしめる目的を持っていないとも限らないからです。

 

親の土地・家を売買する場合には、売買代金を介護費用捻出や施設入所の支払い等が使途になっているパターンが多いでしょう。土地などの不動産は経済価値が高く、えてして違法行為が起こりやすくなります。

 

そのため家庭裁判所の成年後見人専任手続きにおいては、配偶者や子などの候補者を立てていても、弁護士などが専任されることもありえます。家庭裁判所としては、親の土地・家の売却のための成年後見人申し立てについては、類型的に親の財産目当ての可能性が高いと見られているので弁護士などの第三者を選任することで、被後見人である親の利益を擁護する場合があるのです。

 

親の土地・家の内、土地などを売却するなら成年後見人の関与で足りますが、親の土地・家の中でも自宅などの居住用の財産を売却する場合には家庭裁判所の許可が必要になります。配偶者に先立たれた一人暮らしの親が施設に入所することになり、親の土地・家全てを売却するような場合には注意が必要です。

 

贈与を目的として売る

それでは親の土地・家の売却代金を配偶者や子に生前贈与することを予定するパターンではどうでしょうか。この場合には売却代金を贈与することが多く、持ち家を対象にすることは想定しづらいので、土地などの不動産を想定しておきます。

 

まず贈与の手続きを確認しておきます。親名義の土地を子に替えると贈与とみなされます。

 

110万円の基礎控除を超える額について贈与税が掛かることになります。

 

贈与税は超過累進税率が取られているので、土地などの不動産価格が高ければ高いほど多額の贈与税を納付する必要があるので、注意が必要です。

 

贈与に基づく名義変更は親子で法務局に必要書類を持参して贈与登記を申請すれば完了しますが、この時にも登録免許税が必要です。課税標準額の2%必要なので、収入印紙代も高額になる可能性があります。近いうちに相続する可能性があるのであれば、あえて贈与を避けることも検討すべきです。

 

それでは、贈与登記をせずに親が直接売却し売買代金を生前贈与するパターンと、親から子に贈与登記をした後に子が売却して売却代金をそのまま手にするパターンとどちらがトクになるのでしょうか。

 

実際に支払いに必要な税額はケースバイケースになるので一概には言えませんが、具体的に税金の算出の流れを把握してみましょう。

 

親の名義のままで売却し、売却代金を子に生前贈与する場合には、親が土地の売却で発生した利益に応じて、譲渡にかかる所得税や住民税の支払いをしてから贈与することになり、子は贈与金額に応じて贈与税を支払うことになります。

 

親から子へ贈与登記を経由して、子が売却して売却代金を手にする場合には、親から子への贈与登記に際しての登録免許税がまず必要です。一般的に贈与は名義人となるべき人(登記権利者)が負担するものですが、親子の間では贈与する親(登記義務者)が負担することも多いようです。

 

更に子が土地の価額に応じた贈与税を負担し、不動産売却により利益を得れば所得税及び住民税を子が支払うことになります。

 

不動産の譲渡益については

  • 短期譲渡所得
  • 長期譲渡所得

に分類され、短期譲渡所得については長期譲渡所得に比して高額な税率が設定されています。

 

この点に限れば、贈与登記を挟んで子が土地売却などで譲渡益を計上した場合、短期譲渡所得に該当する可能性が高いので、高額な税率が適用される恐れはあります。

 

まとめ

親の土地・家を子が売却する典型的な4事例について解説してきました。親名義のままで売ることが出来るのは、子が任意代理人として契約する場合と成年後見人を選任就任する場合ですが、親が死亡している場合相続登記が必要になります。

 

相続登記が必要な場合には法定相続の中で一人でも異議を申し立てれば遺産分割協議は成立しないことになります。話し合いが付かなければ家庭裁判所へ調停を申し立てるなどの手続きに移行しますが、将来に禍根を残しかねません。当事者同士で円滑に協議成立できるように、後日の売却代金の分配を巡って事前に合意を取りまとめておくことが大事です。

 

親が療養中などの理由で、子が任意代理人として買主と売買契約交渉を進めるうえでは、相手方が不信感を抱くことが多いので、買主の懸念を払拭するための方法を考える必要が顕著です。委任状には実印押印するのはもちろんですが、押印は実印押印し印鑑証明書も添付するなどして親本人の真意に基づく代理権授与行為であることを証明することが重要です。

 

本人と子の間の親子関係を証明するために、時には戸籍謄本や住民票を提示を求められることもありえます。親子であれば印鑑の保管場所も知悉している場合も当然ありえるので、実印を押印している一事を持って買主の不信や不安を払拭できない懸念は常にあるので、場合によっては弁護士などの第三者に依頼することが必要になります。

 

本人に意思能力が無ければ成年後見人を選任して売買契約に関与してもらうことになります。成年後見人は子でも就任候補者になることは可能ですが、成年後見人の職務が被後見人の良好な環境での療養看護を果たすことが職責とされているので、弁護士などの専門家が選任されることがあります。被後見人の財産を私欲のために費消する事態を裁判所は強く懸念しているからです。

 

売買代金を生前贈与するために親子の間で贈与登記を利用して売買する場合もあります。その際には親が売って売買代金そのものを生前贈与する事例と、贈与登記をして子が売る事例との2つを想定することが出来ます。

 

いずれも贈与なので登録免許税は高額になりがちな上に売却益が出れば所得税や住民税を納付する必要があります。税額については短期譲渡所得に該当する場合は高額な税率が適用されることがあるので事前に注意が必要です。

 

いずれの事例でも親子であっても、不動産をめぐっては利害関係が対立したり、私益追求に走る可能性があります。事前に話し合いを重ねながら、慎重に進捗することが大事です。