サービス付き高齢者向け住宅のメリット・デメリット

サービス付き高齢者向け住宅のメリット・デメリット

高齢化社会の到来、核家族化の進展などにより、高齢者が安心して暮らせる居住環境の整備が社会的な課題となっています。

 

介護が必要な高齢者は、老人福祉施設への入所や、介護できる家族がいる場合には自宅介護が考えられます。介護の必要がない高齢者で、親族と同居の場合は問題は少ないと言えます。しかし、健康で自立できても親族との同居ができず、単身あるいは夫婦だけの生活では不安が付きまといます。

 

介護を受ける場合でも、要介護度の程度が低く、軽度の介護支援を受ければ生活できる高齢者も多くいます。

 

サービス付き高齢者向け住宅は、自立あるいは軽度の介護支援により生活が可能な高齢者に、安心して暮らせる住居を提供するものです。

 

 

一方、サービス付き高齢者向け住宅は、土地活用を目的とした不動産の事業として捉えることができ、そのメリットと、デメリットを考えていきます。

 

成功するサービス付き高齢者向け住宅とは?

土地活用を目的とした不動産の事業としてのサービス付き高齢者向け住宅は、事業として成功を目指す必要があります。サービス付き高齢者向け住宅を事業として考えた場合は、収益と利回りが指標となります。

 

サービス付き高齢者向け住宅の施設を新たに建設する場合、土地はあるものとして、坪当たりの建設費は木造で60万円、鉄筋コンクリート造で80万円程度はかかります。

 

例として戸数が40戸のサービス付き高齢者向け住宅を考えてみます。

一住戸の住室を20㎡、その他の部分を一住戸当り15㎡とすると、延べ床面積は1,400㎡となります。坪単価を鉄筋コンクリート造の場合の坪80万円とすると、この建物の建築費は3億4千万円程になります。

 

家賃を6万円、入居率を90%とすると、年間の収入は2千500万円で、利回りは、7.3%です。地域を考慮せず、費用は建設費だけを抽出し、収入は家賃分だけの計算ですが、補助金を見込むとさらに利回りが上昇し、事業性があることがわかります。

 

サービス付き高齢者向け住宅は、共同住宅の性質と合わせて、介護施設としての性格を持ちます。介護福祉事業との連携も必要で、この場合は介護福祉事業者と提携し、事業を進める必要があります。サービス付き高齢者向け住宅の経営は、介護福祉事業の知識と経験がなければ運営していくのは困難です。

 

地主は土地と建物だけを提供し、運営とサービスは専門の介護福祉事業者に依頼することで、成功への道筋が見えてきます。逆を言えば失敗する可能性が高いのは、介護福祉事業に未経験の地主が、自分で運営する場合です。

 

土地の有効活用のための不動産投資として考えた場合、サービス付き高齢者向け住宅は、建物全体の住宅の占める割合が低くなります。すなわち、共同住宅として考えた場合は収益は低く、介護福祉事業と合わせることで安定した収益が確保できます。

 

経営は介護福祉事業者との共同とするか、一括借り上げをしてもらう方法があります。共同経営の場合は仕事と責任が生じ、一括借り上げの場合は収入が低くなります。

 

そもそもサービス付き高齢者向け住宅とは

サービス付き高齢者向け住宅とは、安否確認と生活相談を最低限のサービス条件とした高齢者向けの賃貸住宅です。

 

通常は都道府県の登録を行う必要があり、登録には一定の要件を満たす必要があります。

 

要件には

  1. 施設としての要件
  2. サービス上の要件
  3. 契約上の要件

があります。

 

施設としての要件には、廊下幅、出入り口幅の他に、床の段差がないこと、浴室と階段に手すりを設けるなどのバリアフリーの要件があります。また、最低でもトイレ、洗面設備の付いた18㎡以上の住室が必要です。台所、浴室、収納等は共用での利用が可能です。

 

サービスの要件では、安否確認と生活相談が必須で、日中は専門の相談員が常駐する必要があります。その他のサービスは任意ですが、通常食事のサービスは必要となります。食事は施設内で調理されることは少なく、外注により取り寄せ、内部では盛り付けや配膳、あと片付けが行われるのが一般的です。

 

契約の要件では、住居部分が明示された書面による契約が必要です。さらに敷金や家賃、サービス料以外の料金は受け取ることができません。建物が完成するまでは前払い金は受け取れず、その他の高齢者の居住の安定をはかる規定が設けられています。

 

そもそも国の高齢者向け住居は、

  • 高齢者円滑入居賃貸住宅
  • 高齢者専用賃貸住宅
  • 高齢者向け優良賃貸住宅

等に分かれていましたが、高齢者の住居を施設として考える厚生労働省と、高齢者の住宅も住宅であると考える国土交通省が連携して、サービス付き高齢者向け住宅の制度がつくられました。

 

サービス付き高齢者向け住宅は高齢者に安定した住居を提供するのが目的の制度ですが、長期入院や身体条件の悪化などにより、退去が必要となる可能性もあります。近隣の訪問看護等の利用により生活が継続できれば問題はありませんが、それ以上の医療行為等は受けられないことになります。

 

また、認知症の悪化により、集団行動が難しくなった場合も、退去せざるを得なくなります。さらには家賃の滞納などの経済的要因でも退去させられることがあります。

 

メリット・デメリット

 

サービス付き高齢者向け住宅は、土地活用を目的とした不動産の事業として、メリットとデメリットを考える必要があります。

 

土地活用を目的とした不動事業には、一般の賃貸住宅事業がありますが、賃貸住宅の建築が可能な地域は利便性の良い場所に限られます。市街地から離れた交通の便の悪い場所に賃貸物件を建てた場合は著しく入居率が下がります。一方、サービス付き高齢者向け住宅は、利便性の悪い場所でも他の条件で入居者を確保できます。

 

健康的に問題のない高齢者の入居も見込まれるので、あまりに辺鄙な場所は好まれませんが、一般の賃貸物件に比べると利便性の制約はきつくはありません。一方、サービス付き高齢者向け住宅は老人福祉施設の意味合いも持ちます。そのため、介護事業者等との提携が必要で、経営状態は事業者の手腕により影響を受けることとなります。

 

経営手腕のない事業者と提携した場合は、入居者の減少による収入減などの影響を受けることになります。一括して貸す場合は、共同で経営する場合と比べて収入は下がります。

 

またサービス付き高齢者向け住宅を経営する場合は、入居者側から見たメリットとデメリットも把握しておく必要があります。

 

 

入居者側から見たメリットは、

  1. 高齢者であることを理由に入居を断られることがないこと
  2. 入居一時金が必要ないこと

が挙げられます。

 

その他にキッチン付きの場合は自炊が可能で、外出なども自由にできるメリットがあります。

 

一方、老人福祉施設ほどには手厚い介護が受けられないことや、身体条件の悪化により居住が難しくなるなどのデメリットがあります。

 

所有する不動産の有効利用は、一般的に都市部ほど有利ですが、サービス付き高齢者向け住宅は地方においても、一定の高齢者がいることで可能となるのが大きなメリットとして挙げられます。

 

人口減少で地方での不動産事業は年々難しくなりますが、サービス付き高齢者向け住宅での土地の有効活用は、しばらくの間は一定の需要が見込めます

 

土地や必要な人材

サービス付き高齢者向け住宅を事業として始める場合は、一定の土地を所有していることが前提となります。さらにその土地は、都市計画法や建築基準法に照らして、サービス付き高齢者向け住宅の建設が可能であることが必要です。

 

都市計画区域内では、市街化区域のほとんどの用途地域に、サービス付き高齢者向け住宅の建築が可能です。市街化調整区域では建築が難しく、無指定区域でも一般的に建築は可能です。建築には土地が道路と接していることが必要です。不動産事業では法律の規制が多いため、事前のチェックが欠かせません。

 

サービス付き高齢者向け住宅を建設する土地は一定の広さが必要です。広さの目安は、住戸数により定まる延べ床面積が、容積率の制限を超えていないことです。建築面積は建ぺい率を超えてはならず、その他の法規もクリアする必要があります。

 

地方においては、施設建設による上下水道の確保が問題となることがあります。特に公共下水道が敷設されていない地域では、排水先の了解を取っておく必要があります。

 

サービス付き高齢者向け住宅で必要な人材は、状況把握サービスと生活相談サービスで専門の人材の常駐が必要です。また、福祉サービスの提供は、事業者との提携が必要です。福祉サービスでは食事や清掃のためのスタッフが必要です。

 

経営は一般的に事業者が主導する形で行われ、地主は所定の賃料を受け取ることになります。サービス付き高齢者向け住宅は、様々な分野からの参入が相次いでいますが、介護事業者の参入の割合が最も多くなっています。さらに、医療事業者や建設・不動産業者の参入も高い割合を示しています。

 

提携する事業者を選ぶ場合は、介護や老人福祉の分野での経営経験を見極める必要があります。大きな企業が提携先として相応しいというわけではなく、介護や老人福祉に高い使命感を持っていることが必要です。営利のみを目的としている事業者の場合は、利益が得られないと判断すると、簡単に撤退してしまう傾向にあるので注意が必要です。

 

補助金制度

サービス付き高齢者向け住宅のメリットとして補助金があります。

 

元々、国が推進する制度のためサービス付き高齢者向け住宅は、新築時と改修時に、上限が設けられた補助金を受けることができます。補助金を受ける前提として、都道府県への登録が必要です。補助金はサービス用の高齢者生活支援施設が併設されている場合でも受けることができます。

 

補助金を受けるためには申請から補助金額の確定と支払いに至る、一定の手順を踏まなければなりません。サービス付き高齢者向け住宅の補助金を受けるためには、都道府県への登録のための事務局での事前審査が必要です。事前審査では、提出時に必要となるほとんどの書類を用意しておく必要があります。

 

事前審査で不備事項があった場合のチェックも行われ、担当者の指示により完全な形の申請に向けた準備がなされます。登録がなされると、補助金の交付申請が可能となります。交付申請が行われると、事務局での審査が始まります。

 

事務局では、提出された書類を元に審査を行いますが、事前審査により修正箇所を正している場合は、審査は順調に進みます。審査に合格すると補助金交付決定の通知がなされ、正式に補助金の交付が決まります。

 

交付決定の通知と同時に、サービス付き高齢者向け住宅の着工が可能となり、本格的に工事を始めることができます。

 

 

工事が終わったら完了実績報告の提出を行い、補助金額の確定と支払いがなされます。

 

手続きは面倒ですが、補助金が住宅だけでなくサービス施設でも受けられる点は魅力です。補助金の申請は施設建設の着工前に行われる必要があります。サービス付き高齢者向け住宅を建設する場合は、着工までに資金の確保を行い、設計や見積りを経て建設業者を決め、建築確認申請を通しておく必要があります。

 

補助金の交付は資金の一部を占めるので、影響は大きいといえます。サービス付き高齢者向け住宅の事業では、金融機関からの融資のほかに、補助金もしっかり確保すべく事前に担当者との打合せ重ねて目途をつけておく必要があります。

 

田舎への需要

少子高齢化と一部地域への人口集中により、地方では人口減少や過疎化が進んでいます。地方にあっては、不動産事業は厳しさを増しています。

 

大都市においても、都心部以外の周辺地区の不動産需要は伸び悩んでいます。このような時期にサービス付き高齢者向け住宅は、地方や田舎においても一定の需要が期待できる不動産事業の一つです。

 

高齢化率は都市部よりも地方の方が著しく、地方ではサービス付き高齢者向け住宅に一定の需要が見込まれます。従来の地方では、大家族により子や孫の世代が高齢者を見る体制が整っていました。しかし、地方には今もって若者の働く場所が少なく、若者は都市部へ就職により転出するケースが減っていません。

 

地方では、従来大家族制により暮らしていた世帯においても、高齢者だけが残されるケースが目立ってきました。高齢者は住みなれた地域を離れて、別な場所で暮らすことに簡単には合意しません。しかし、からだの衰えと共に高齢者だけによる生活は、日増しに難しくなります。都会へ出た子や孫の世代も、実家に残した高齢家族が心配になり、サービス付き高齢者向け住宅への入居を勧めるケースもあります。

 

サービス付き高齢者向け住宅は、地方や田舎において事業として一定の需要が見込まれています。地方や田舎では、サービス付き高齢者向け住宅の建設コストは都会と比べて安い傾向です。サービス付き高齢者向け住宅の経営では、初期投資を低く抑え、入居率を上げて家賃収入を確保することが大切です。

 

初期投資である建設費を安く抑えられることは、事業全体にとって有利な条件となります。地方では人件費も安く、多くの人手が必要な福祉関連事業にとっては良い条件が整っています。もちろん地方や田舎での土地活用は、サービス付き高齢者向け住宅の建設だけではありませんが、様々な活用法がある中で、安定した利益と地域への貢献度では、サービス付き高齢者向け住宅は、有望な事業と言えます。

 

事業にあたっては、地域の高齢者数を把握し、一定の需要が見込めることを確認することが大切です。

 

まとめ

サービス付き高齢者向け住宅は地方でも利益の見込める有望な不動産事業に数えられるようになりました。サービス付き高齢者向け住宅は土地の有効利用と利益の確保を目的としています。事業にあたっては、介護事業者等の協力が必要です。

 

土地と建物は地主が提供し、サービスの運営は事業者が行うという、役割分担が求められます。面倒な事業者とは関わり合いたくなく、リスクを取りたくないのであれば、一括借り上げ方式の利用により、安定した利益を得ることも可能です。ただし、自ら事業に参加するのと異なり利益は低くなります。

 

サービス付き高齢者向け住宅の事業を行うにあたっては、提携する事業者の質が重要な意味を持ちます。事業者が優秀であれば、高い入居率と安定した収入が期待できます。逆に、事業者の経営手腕が低い場合は、入居率の低下と収益の悪化をもたらします。

 

優秀な事業者を見つけるには過去の実績が参考になります。介護事業の経験は、サービス付き高齢者向け住宅の経営でも生きてきます。地主が提携する事業者を探す方法は、不動産業者をあたる方法や介護事業者や医療事業者にあたる方法があります。

 

サービス付き高齢者向け住宅の目的は利潤の追求だけでなく、社会の要請に応えるものでもあります。高齢者の住居に対する責任と使命感を持っている事業者との提携が望まれます。

 

提携先としては大手と地元事業者があります。大手の事業者が必ずしも頼りになるとは限りません。大手の事業者は一定の利益が見込めない場合は早期に撤退すことが懸念されます。

 

地元の事業者は、地元への愛着と事業に対する使命感が期待できますが、経営基盤の弱さが心配されます。

 

サービス付き高齢者向け住宅の事業は、提携する事業者の質如何により、成功するかどうかが決まります。慎重に事業者を選ぶと共に、自らの経営への関与も必要です。入居者は家賃の高低だけで入居を決めるわけではなく、サービスの質も求めます。

 

サービス付き高齢者向け住宅は事業性と共に、高齢者への奉仕の精神も必要となる事業です。