貸し農園ビジネス!市民農園の開設方法

貸し農園ビジネス!市民農園の開設方法

 

不動産には宅地、山林などの他に、農地もありますが、農地を所有していても高齢化等による体力的な問題や、農業以外の仕事が忙しい等の理由で農業を営むのが難しく、遊休農地となっている土地や、その活用方法を模索している人も少なくありません。

 

遊休農地となっている不動産の土地活用には、売却という選択肢や農地として人に貸すという選択肢、転用して農地以外の用途で使用するという選択肢がありますが、どれにしても農地法で制限されており、中でも転用は簡単に許可は下りないため、農地は農地法によって強固に保護されていると言えます。

 

そういった背景から、農業をしたいけれど土地がないという人に農地を利用してもらい収入を得る市民農園というビジネスが注目されています。大きな収入にはならなくても何もせずに農地を放置しておくよりはメリットがありますが、その制度は複雑です。ビジネスとして市民農園を開設する方法について紹介していきます。

 

市民農園の開設方法

体力的な理由や時間的な理由で自身で農業をするのが難しい場合や、農地が広大で自身で営農するだけでは農地を持て余してしまう場合など、ビジネスや土地活用の一環として市民農園の開設を考える際には、認定や承認が必要となるため、どんな開設方法があってどんな手続きをしなければならないかをよく理解した上で計画をしなければなりません。

 

開設にあたっては、その形態や設備によって関係してくる法令がいくつかあり、それによって開設方法にも3通りの方法があります。それぞれ面積や期間、目的など、細かな部分の条件や制限がありますが、詳細は後程それぞれの方法について詳しくご紹介させて頂くことにして、まずは簡単に3つの開設方法について説明していきます。

 

特定農地貸付法による開設方法です。

特定農地貸付法というのは、昭和27年に定められた農地法の特例について平成元年に定められたもので、農地についての賃借権や、使用および収益を目的とする権利について定められたものです。特定農地貸付法による開設方法は市民を対象に農地を貸し付けるという形の市民農園で、その賃料を受け取ることが可能となります。

 

農園利用方式による開設方法です。

市民を対象に、農作業を体験してもらうという形の市民農園で、法律による規制はなく、利用者から作業をする際の入園料を受け取ることが可能ですが、農園利用方式で開設できるのは不動産の所有者が営農している場合に限られています。

 

市民農園整備促進法による開設方法です。

こちらはトイレや休憩所、駐車場、農機具の倉庫等の付帯施設がある形の市民農園です。市民農園整備促進法は農地と付帯設備を兼ね備えた優良市民農園の整備の促進を目的としているため、付帯設備の整備は必須とされています。こちらの方法では市民に農地を貸し付けて賃料を得ることも、農作業体験をしてもらい入園料を得ることも可能となります。

 

いずれの開設方法にしても、農地を市民に貸し付けるか、農業体験をしてもらうという内容のどちらかに該当し、どちらの内容にしても付帯施設がある場合は市民農園整備促進法による方法だと考えると分かりやすいでしょう。

 

正確に言えば、特定農地貸付法による市民農園や農園利用方式による市民農園でも付帯施設を設置することが認められてはいますが、付帯施設の設置場所に対して転用許可を取らなければならない上に、さらに開発許可を取る必要がある場合もあるため、付帯施設の設置を考える場合は市民農園整備促進法による開設が現実的と言えるでしょう。

 

これらの3つの方法による開設には条件や制限のほか、結ばなければならない協定があったりと手続きの違いなどもあり、それぞれ特徴があります。これからそういった細かい部分についても確認していきましょう。

 

特定農地貸付方による開設

まず一つ目は特定農地貸付法による方法です。農地を市民に貸し付けて賃料を得る方法で、農地を小さく区画して貸し付けます。開設する際には農業委員会の承認が必要となっており、貸し付け条件が規定されています。その内容は、広さが10a未満で相当数が定期的な条件で行われていること、営利目的の栽培ではないこと、貸し付け期間を5年未満とすることなどとなっています。

 

10aは300坪で約一反となり、10a未満と言っても個人で作物を栽培するには広すぎるため、広いところで100平方メートル、小さな区画では15平方メートルほどというのが一般的です。営利目的の栽培ではないという点において、利用者が作物をどうするかは自由ではありますが、当初から販売目的の作物を作るために借りる場合は営利目的とみなされます。

 

しかし、思った以上にたくさん収穫できて、自家消費できないほどの場合は、直売所で販売したり近所に配ることまでは制限されていません。貸付期間が5年以内とされているのは広く一般に使用してもらうためで、短すぎると栽培する作物が限られてしまうためです。長期利用をする場合は5年以内の貸付を更新していくことで可能になります。

 

農地への権利設定においては、貸し付けた以上農地を使って収穫物を得る使用収益権は市民にありますが、農地の権利設定には農業委員会の許可が必要となります。特定農地貸付法による農園では農業委員会から開設の承認を得ることで使用収益権の設定に特例が適用できるため、別途許可をとる必要がなくなります。

 

特定農地貸付法には開設する場所に関する規定はありませんが、農業委員会の承認が必要で農業委員会が適切ではないと判断した場合は承認が受けられません。そのため、場所に関しては農業委員会の判断によりますが、市民農園ができることで周辺の土地の農業に支障が出る場合や地域のニーズに合わない、必要以上に広大な農地の農園は認められない可能性が高いと言えます。

 

農業委員会への承認には貸付協定と貸付規定の提出も必要となります。貸付協定は農園の適正な運営管理や閉園後の農地利用について市町村と結ばなければならない協定で、貸付規定は利用者に対しての貸付期間や賃料、募集方法などについて定められたものです。

 

他にも、農機具の用意や栽培指導についても考えなければなりません。農機具は誰が用意してもいいのですが、利用者は農地での栽培は初めてという人も多いため、用意してあげるか、利用者が用意するにしてもその保管場所を確保してあげた方が喜ばれるはずです。また、栽培指導の体制も整備するように貸付協定によって定められているため、自分で栽培指導をするのが難しい場合は指導員を配備するという事も必要となります

 

相続税の納税猶予にも注意が必要です。相続税の納税猶予を受けている場合、市民農園を開設することで、不動産所有者が自ら営農していることにならないため納税猶予が適用外となり、相続税と利子を納付しなければなりません。

 

農園利用方式による開設

農園利用方式とは不動産所有者が農業を営み、利用者がその農作業に参加することで入園料を得る方法です。

 

特定農地貸付法による農園と違って、農地を他人に貸すわけではないので、利用者への使用収益権の設定も不要で、農地法の規制を受けることもありません。その条件としては、相当数が定型的な条件で行うことや、営利目的の栽培ではないこと、農作業が継続して行われることなどがあります。

 

貸付の条件においては、特定農地貸付法と違って貸付面積や期間の制限がありませんが、面積も期間も特定農地貸付法に準じて10a未満で5年以内という条件を設定するのが望ましいとされています。定型的な条件としては、農園利用契約によって利用期間や利用料金を定め、適切に運営することを意味し、営利を目的としないという点においては特定農地貸付法と同じとなっています。

 

農作業が継続して行われるという部分に関しては、収穫のみを体験する観光農園のようなものではなく、複数の農作業を段階的に体験するといった形態をとることを意味します。種まきや苗の植え付けから、支柱をたてたりするなどの収穫以外の農作業も体験した上で、収穫作業で終わるといった形態です。

 

農園利用方式では市町村への手続きが不要なので、もちろん場所についても制限はありませんが、モラルの低い利用者がいた場合に近隣住民や近隣農家に迷惑をかけないように、運営管理は重要となります。

 

農機具の用意や栽培指導についても決まりはありませんが、農園利用方式は不動産所有者が営農する中でその農作業の一部を体験させるという性質上、開設者が農機具や苗、もちろん肥料や資材も用意をして、栽培指導も行うというのが一般的です。

 

収穫物については、特定農地貸付法の場合と違って不動産所有者のものとなるため、利用料は入園料と言うよりも農業体験の体験料という感覚になりますが、農園利用契約によって収穫した作物を利用者の収穫物として定めることも可能となっています。

 

相続税の納税猶予に関しては、不動産所有者が農業を営んでいるという状況には変わらないので、相続税の納税猶予を継続して受けられる可能性がありますが、税務署が利用実態を確認し、判断した上で決定するため、必ず継続して猶予を受けられるとは限りません。不動産所有者が継続して農業を営んでいることが条件となっているため、利用者に自由な作付けをさせて収穫物も利用者のものとしている状態では、事実上は農地の貸付を行っているのも同然というような状況とみなされるため、納税猶予が認められないということになります。

 

そのため、これまで納税猶予を受けていて、継続して納税猶予を受けたい場合には、どうすれば納税猶予が継続できるかを税務署に相談した上で開設を計画するのが確実な方法です。

 

市民農園整備促進法による開設

市民農園整備促進法による市民農園は、特定農地貸付法や農園利用方式による市民農園に付帯施設を設置し、利用者がより利用をしやすくなるように環境を整備する方法です。

 

農地の貸し付けも農作業体験も可能で、農地の貸し付けを行った場合は賃料を、農作業体験を行った場合は入園料を利用者から受け取ります。利用者が多くなると休憩所やトイレ、農機具を保管する倉庫などがどうしても必要となってくるため、規模が比較的大きな市民農園では市民農園整備促進法による方法が利用されることが多いと言えます。

 

付帯設備がある以外は、特定農地貸付法による開設や農園利用方式の開設と変わらないため、それ以外の制度上での違いについて説明します。

 

農園を開設できる場所は限定される場合があり、市街化区域においては指定はありませんが市街化調整区域の場合には市町村が市民農園区域として指定している区域に限り開設が可能となります。周辺の農用地利用に影響がないかという点や、道路などのインフラ整備計画をふまえて市民農園区域が決められるため、市民農園整備促進法による市民農園の開設においては市民農園区域に指定されていること、もしくは市民農園区域に指定してもらう事が第一の条件となります。

 

手続きにおいても、特定農地貸付法による開設や農園利用方式の開設とは違ってくる部分があります。市民農園整備促進法による開設には市町村に開設を認定してもらう必要があり、そのために手続きをしなければなりません。その手続きでは農園の整備運営計画を市町村に提出する必要があり、整備運営計画書には農園の内容や付帯施設の詳細、資金計画や利用条件なども記載する必要があります。さらに、農地としての貸し付けによる運営をする場合には、もちろん農園利用方式と同じで貸付協定の締結も必要となります。

 

市民農園整備促進法による農園開設の大きな特徴は関係法令への特例があることです。特定農地貸付法による農園開設では農業委員会の承認をもって特例で利用者への使用収益権の設定を可能にしているのに対し、市民農園整備促進法による農園開設においては市町村の開発認定を得ることで農業委員会の承認を得るのと同等の効果を得ることが可能となります。

 

また、大きなメリットともなるのが、本来付帯施設の設置に伴って必要になる農地の転用手続きが不要となることです。新たな建物の建築など、開発が制限されている市街化調整区域においても、休憩施設やトイレ、農機具などを保管する倉庫や管理事務所を完備するために開発許可を得られるというのも大きなメリットと言えます。

 

こういった関係法令への特例は、付帯施設の設置をする予定がなければ必要ないため、付帯施設を設置したい場合は市民農園整備促進法による農園開設が最善の方法となります。

 

まとめ

農地は食料の自給率が低下することを防ぐという目的のため、許可なく農業以外の用途で土地を使うことや、売却すること、貸すことは許されていません。

 

そのため、不動産の土地活用において、農地を売りたい場合や貸したい場合には、相手が農家でなければならないという条件があるため、買い手や借り手が見つからない場合には遊休農地となり、そのうちに耕作放棄地となってしまうケースは少なくありません

 

人が住んでいない家は朽ちるのが早いのと同じで、農地においても人の手が入らないと荒れてしまいます。農家に生まれた子供が将来農業を継ぐというのは現代において当然の事とは言い難く、多くの農家は後継者不足に悩まされています。そのため、相続によって田畑を始め農地を手にしても農業を営むことができず活用できないまま放置され、耕作放棄地となってしまうケースが多く、問題にもなっています。

 

所有者にしても、非農地とみなされてしまうと固定資産税が上昇してしまうというリスクがあります。市民農園はそういった遊休農地を有効的に活用するビジネスの一つですが、制度が複雑で手続きも必要となるため、農業委員会や市町村に相談の上で、アドバイスをもらいながら計画するなどしなければ認定してもらえなかったり、承認を受けられない可能性も否定できません。

 

しかし、都市部で生活しながら農業体験をしたいという人も増えてきており、需要はたくさんあることから、企業が農地を借り受けて市民農園を開設し、運営しているといったビジネスも徐々に広がってきています。自身で農業を営むことが難しいという場合には、そういったビジネスを利用するというのも有効な土地活用となります。

 

農地を宅地にすることはできないため、活用の幅は極端に狭くなっており、用途も限られてしまいます。土地に対する固定資産税は宅地に比べて安いとはいえ、その活用に悩んでいる人は大勢います。農地として他人に貸す場合にも、相手が限られるうえに賃料は安いため、ためらってしまうという人も少なくありません。

 

一方で家庭菜園や週末農業といった農業体験をしたいというニーズは増加傾向にあります。

 

そういったニーズにこたえるビジネスとして、6平方メートルほどの市民農園をサポート付きで提供している「シェア畑」というサービスが注目されています。

 

運営者に農地を預けて市民農園の管理・運営を一括して委託することで、賃料も一定の金額で安定して得られるため、農地活用の新たなビジネスモデルとなっています。

 

市民農園には興味があるけれど自分で手続きやビジネスとして市民農園を運営・管理するのは難しいという方や農地の土地活用について困っている方は、そういったビジネスを運営している企業に相談してみるのも一つの方法かもしれません。