土地の実勢価格についてと公示地価や路線価とは?

土地の実勢価格についてと公示地価や路線価とは?

土地の価格を知ろうとすると、様々な「価格」があって迷うものです。もちろん土地も一つの商品ですから、他の商品同様に市場で決まる「価格」があります

 

これを「実勢価格」といいます。

 

ただし、土地と言うのは特殊な商品であり、特殊な取引を行うものです。したがって、一般の商品とは異なった性質を持ち、推測することはとても難しいものです。

 

土地の価格を示すものに、国土交通省が発表する「公示地価」や、税を扱う国税庁や地方自治体が発表する「路線価」があります。

 

これらも独自の性質があり、実勢価格とは違いが生じます。参考程度に考えるのがよいでしょう。

 

実勢価格とは?

実勢価格とは売主と買主の合意で決まるものです。実際の市場で売買されている価格がそうです。普段の生活の中で、日常の暮らしに必要な商品を買うときも、実勢価格で売買が成立しています。スーパーが付けた値札に納得して客は買っているからです。

 

買い物の前に、あちこちのスーパーを見て回って「大体これくらいの値段がついているもの」「今、旬だから安くなっている(季節外れだから高くなっている)」などの価格の推移を頭に入れていることも多いでしょう。底値を頭に叩き込んでいる節約主婦も多いはずです。

 

家電製品などではメーカーが希望小売価格をつけますけれども、客の方は家電量販店を見て回り、大体の値段の幅や、価格を変化させる要因(新型製品が出る頃だから型落ち品がやすくなる時期だ、など)を頭に入れてから、いつ、どこで、どの値段で購入するのかを決めるでしょう。そして、客が来なくなれば、店側は価格を引き下げるかもしれません。それが功を奏して客が戻ることもありえます。

 

逆に、店頭に出したとたんに売り切れるようなら、店は今後高めの値段をつけるでしょう。それでも買う客が途切れなければ、当面はそれが実勢価格です。

 

つまり、実勢価格での売買では、買主は売値が変動することを頭に入れて購入し、この買主の動向によって売主が価格を設定し、それによってまた買主が購入するかどうかを決めています。

 

このように、売主と買主の合意で決まる実勢価格と言うものは、常に変動するものなのです。と同時に、実勢価格はある程度の幅の中におさまるものです。なぜなら、あまりに極端に高額だと買主は購入を見送りますし、あまりに極端に低額だと売主が売ろうとしません。

 

大体の相場というものがあり、この中で買主は購入に踏み切ります。必ずしも底値でなくても、

  • 「自宅から近い店舗だから」
  • 「今、緊急に必要だから」

という理由で購入することも多いでしょう。それでも、購入する際には「まあ、相場の中だからしょうがない」と納得しているものです。

 

この実勢価格全体の相場を基に、私たちは個々の実勢価格を

  • 「高い」
  • 「安い」

と判断しているのです。

 

実勢価格とは、常に変動するものであると同時に、いくらかの幅を持つものであるという二つの特徴を持つ価格です。そして、それは私たちの日常生活のモノの値段の決まり方として、ごくごく身近なものです。普段意識していなくても、私たちは実勢価格の取引に馴染んでいるのです。

 

土地の実勢価格とは?

不動産は特殊な商品です。それゆえに、普通の日常生活製品の実勢価格の決まり方とは異なります。不動産には一つとして同じものがありません。

 

土地であれば

  • 「広い道路に面しているのか、そうでないのか」
  • 「平坦な土地か、傾斜地なのか」
  • 「日当は良いのか、悪いのか」

など、商品としての性質は様々に異なります。

 

私たちが日常的に購入する生活用品は、異なる値段がついていても、売られているのは基本的に同じモノでした。同じモノに対してつけられている価格ですから、私たちは相場をもとに、高いのか低いのかを判断することが比較的容易にできます。

 

ところが、不動産は異なるモノに対して異なる値段がついています。そのため、私たちには、その不動産の価格が高いのか安いのか判断することが難しいのです。

 

そして、もう一つ、日常生活用品の売買と異なる点があります。不動産の場合、売主と買主の合意が普通の生活用品の場合よりもずっと直接的になされます。日常生活用品の場合、買主は購入を見送る際黙って店を立ち去りますし、売主は「売れ行き」という複数の買主の動向を分析して価格を決定します。

 

売主と買主の間に直接やりとりはありません。中には、売り場で堂々店員と交渉する客や、それに応える店もあるかもしれません。

例えば、家電量販店で高い買い物をする際にそういう場面があるかもしれません。

ただ、それは生活用品の売買では例外的な出来事です。

 

普通の生活で、卵だのキャベツだの1品1品そんなことをやっていたら時間はいくらあっても足りませんから、直接店員と交渉などしません。日常生活用品の実勢価格は、売主と買主の合意に基づきはしますが、相互の干渉は間接的なものです。それに対して、不動産の売買については、合意を直接行うのが普通です。

 

そして双方の個別的な事情がより直接に反映されます。売主と買主の「早く売りたい(買いたい)」「買主が親戚だから安くする」などの事情も、双方が納得するなら、不動産価格の決定に含まれます。もちろん、これらの事情が別の取引に当てはまるわけではありません。不動産の取引は一つ一つ個別の事情に基づいてなされることになります。

 

このような理由で、過去の取引事例から実勢価格を決定するのは難しいものとなります。今までの過去の取引事例での価格は、将来の取引で成立する価格であるとは限りません。

 

ただし、極端に相場とかけ離れた価格では、やはり売買の合意に至ることは難しいものです。これは生活用品と同じです。類似の事例を参考に、幅のある価格帯として相場を知ることはやはり重要なのです。

 

実勢価格の例を紹介

過去の取引事例は、例えば国土交通省が提供している土地総合情報システムで閲覧することができます。

 

ここで「東京都」「世田谷区」「上馬」で検索してみます。これで同じような条件の過去の取引事例が集まります。この中でさらに似た事例を探しましょう。

 

3つ似たような事例がみつかります。

 

①これらはいずれも最寄駅が同じ駒沢大学駅で、その駅から8~9分の距離にあり、土地の形も(ほぼ)長方形です。他の条件を見比べても、細かい違い(広さ、全面道路の幅員、方位など)はありますが、それほど問題となる違いではありません。

 

これを坪単価で比較すると、それぞれ「250万円」「220万円」「230万円」となります。これらのデータから、実勢価格は200万円を超えるもので、条件によって数十万円の幅があるものだ、という感触が得られます。

 

この実勢価格帯から極端に離れた値段で売買が成立したならば、何か特殊な事情があったと考えられます。

 

②例えば、同じ「駒沢大学駅」から8分の距離でも、坪単価が「83万円」という事例があります。

 

土地総合情報システムの画面からは、この事例では土地の形が「不整形」であることが読み取れます。きれいな四角でない土地は使いづらいので安くなったのだろう、と推測できます。極端に相場とかけ離れたものの中には、ひょっとしたら不公正な取引があるかもしれません。もちろんこちらは参考になりません。

 

取引事例は数が少ないと参考になりません。そこで同じ地域の売り物件の価格を調べてみましょう。

 

③世田谷区上馬では、駒沢大学駅から12分の土地が坪単価「264.5万円」で売られています。過去の取引事例のデータで得られた実勢価格の相場(220~250万円)よりやや高めですが、大きく外れていません。

 

売却価格は売主の希望が反映されて高めに設定されるものです。それを割り引いて考えると、やはりこの地域の実勢価格は「200万円超で、条件次第で数十万円の幅が出る」と考えられます。なお、過去の取引事例の方も、あくまで過去のものですから、現在の実勢価格を正確に反映している訳ではないことにも注意が必要です。

 

他にも、不動産業者のの査定を利用することで実勢価格の相場を知ることができます。ただし、実際に依頼しないと分かりません。また、業者によって値段が違うので、これも極端な価格ははじいて考えるべきです。

 

一括査定サイトでは一度に複数の業者の査定額を比較できます。

 

地方では、都市圏のように売買事例は多くないので、業者の査定を利用することが適切な手段となります。

 

公示地価・基準地価と実勢価格の差

土地の価格には、国土交通省の公示価格や都道府県の基準地価があります。公示地価や基準地価も、実際の取引にある程度までは参考にされます。ただし、実勢化価格と、これら公示価格・基準地価との間には差が生じるものです。

 

理由の一つは、実勢価格はあくまで売主買主の自由な合意によって決定することによります。売主は高く売りたいと思い、買主は安く買いたいと思います。この両者の攻防を経て価格は決定しますし、この場面では公示地価や基準地価はあくまで参考です。さらに、何らかの事情でどちらかが売買を急いでいれば、そちら側にとって不利な価格でも、それで決定します。

 

また、売主買主どちらかが相場をよく知らなかったり、お互いに血のつながりがあったり知り合いだったりすると、相場より高くなったり安くなったりします。実勢価格はこういった事情も全部ひっくるめて決まる価格です。

 

ところが、公示地価・基準地価は、国家資格である不動産鑑定士が複数で算出するものです。

 

客観性を最優先し、特殊な事情は補正(特殊すぎる事例は除外)して算定されます。このように、公示地価・基準地価は実勢価格と性格を異にするものです。当然、数値にも違いがでてくることになります。

 

もう一つ、公示地価・基準地価と実勢価格の間に差が生まれる理由があります。それは公示価格・基準地価の発表時期が限定されているということです。

 

公示地価も基準地価も年に1回しか発表されません。しかし、その1年の間にも、様々な要因で土地の実勢価格は変動します。人口流入、交通網整備、商業施設の開業、海外からの投資の増加などの諸事情によって需要が増加するかもしれません。

 

逆に人口流出、商業施設の閉鎖、災害によるインフラ被害や土壌の劣化、金利上昇で需要が減るかもしれません。需要の増減とともに土地の実勢価格も上下することになります。けれども、これらの変化が公示地価・基準地価にどう反映されるのかを知るには、次の発表時まで待たなければなりません。

 

そして次の公的価格が発表される頃には、すでに実勢価格は変化を始めています。このようなことから、公示地価・基準地価は実勢価格を後追いする形にならざるをえないのです。

 

公示地価・基準地価と実勢価格のどちらが高く(低く)なるかは、両方の可能性があります。東京のような土地需要が大きい地域では、実勢価格の方が公示地価・基準地価よりも高くなる可能性があります。逆に、需要が少なくなっているような地域では実勢価格の方が公示地価・基準地価よりも低くなる可能性もあります。

 

路線価と実勢価格とは?

土地の公的価格には、公示地価と基準地価とは別に、相続税路線価と固定資産税路線価というものがあります。

 

前者の公示地価と基準地価は、限られた「点」である基準地についてしか分かりません。それに対して、後者は「路線価」という名前の通り「道路」という「線」について設定されています。

 

そのため、その道路に接している土地の価格を決めるにあたって広く参考にすることができます。その土地の路線価と面積が分かれば一定の計算式で、その土地の評価が算出できます。ですから、比較的よくつかわれる参考値です。ただし、この路線価は公示地価を基準として定められるものです。

 

相続税路線価は公示地価の約8割、固定資産税路線価は公示地価の7割となっています。

 

公示地価と実勢価格が大きく異なっている地域では、公示地価と実勢価格とで差が生じたのと同じ理由で、やはり相続税路線価・固定資産税路線価とも違いが生じることになります。

 

また、路線価格は公示地価よりもさらに発表が遅いものとなっています。公示地価は毎年1月1日を基準日として3月下旬に国土交通省が公表します。相続税路線価は、公示地価の約8割となる価格を国税庁が7月1日に発表します(相続税は国税のため国税庁が決定機関です)。

 

そして固定資産税路線価は、公示地価の約7割の価格を市町村が決定しますが(固定資産税は地方税のため市町村が決定機関です)、この評価替えを行うのは3年に1度です。相続税路線価も固定資産税路線価も、公示地価以上に実勢価格とのタイムラグが大きいのです。

 

例えば、6月に相続税路線価を参考にしようにも、7月の発表の直前ですから、参考に出来るのは前年の1月1日のものです。

 

1年半も前の数値しか利用できません。これでは6月現在の実勢価格の参考にはあまりならないでしょう。

 

このような理由から、路線価価格が実勢価格の目安となりうるにはいくつか条件があります。まずは、その地域がもともと公示価格と実勢価格の差が小さくて地価変動が少ないことです。そして、使用する路線価は公示地価水準に計算し直すことが必要です。そして、路線価の改定が行われてすぐのタイミングで試算を行わなければ適切な目安となりません。

 

それでも、相続税路線価と固定資産税路線価の性質上、実勢価格との差はどうしてもある程度生じてしまいます。実際の取引事例を数多く参考にするか、複数の業者の査定結果を参考にするほうが、実勢価格に近い結果が得られます。

 

まとめ

土地の実勢価格を前もって把握するのは非常に難しいものです。

 

土地の実勢価格は、一つ一つ性質の異なる土地について、売主と買主の自由な合意で決まっていくものです。売主、買主の個別の事情が直接的に反映されます。そして、個別の取引の背後からは、その地域の土地に対する需要の動向が影響します。

 

この需要の動向もその時々で変化します。交通網などのインフラの増減、商業施設の増減、投資の対象としての魅力の増減などなど、こういった様々な要素の変化を受けて、需要も大きく増減します。このように、土地の実勢価格というものは、とても個別性と流動性が高いものであり、正確に推測することが困難なのです。

 

この実勢価格を推測するためには、過去の取引事例や、公示価格・路線価などを参考にします。ただし、公示価格や路線価などの公的価格は実勢価格と一致しません。これら公的な価格は、個別の事情を考慮しないという性質を持ちます。また、これらの発表時期と実際の取引の間にはタイムラグが生じます。ですから、実勢価格と公的な価格の間には差があり、必ずしも公的な価格が実勢価格を正確に反映しているとは言えないのです。

 

さらに、その差がプラスかマイナスかも個別の事情によります。たまたまその地域の需要が高いなどの事情があれば土地の価格は値上がり傾向となり、実勢価格が公的な価格よりも高くなります。逆に、何らかの事情で地価の下落が激しい地域なら、実勢価格が公的な価格よりも低くなります。その高低差の幅も、その時その事情で異なり、公的な価格と実勢価格との間には一律の関係性はありません

 

公的な価格については、それぞれの内容や性質をよく理解して、あくまで参考にとどめた方がよいでしょう。不動産の実勢価格について把握したい場合は、こまめに数多くの情報を取得するよう意識することが大事です。過去の取引事例をネットで収集するなどは手軽にできる方法です。

 

普段から常に実勢価格の動向を気に掛けておくことが、今後の実勢価格を適切に推測することにつながります。普段から実勢価格の動向を把握していれば、いざ自分が土地を売買しようとする際に、どれくらいの価格帯になるのか前もって正しく推測することができるようになります。

 

既に持っている土地をいつ売却するべきか、あるいは新たな土地をいつ購入するべきかといった資産運営についても、土地の実勢価格の動向の情報は不可欠なものです。そして、相場をきちんと把握しておけば、それよりも不自然に高かったり低かったりするような不当な取引にまきこまれることも防げます。